「しっぷり」の巻
戦時中の話の聞き取りをしている時、ある高齢の女性が「あの頃は食い物(くいもん)がなくって、大根のシップリまで残さず食ったもんだ」と言った。話の流れからも分かる通り、シップリとは端っこの事で、大根なら葉の付け根や、末端の事である。調べてみると、野菜類の切れ端をシップリというのは、群馬・山梨の秩父に繋がる地域や、また、そこに接する長野・静岡・千葉各県の一部地域であることが分かった。
シップリは元はシリフリだろうが、尻振りでは意味が通らない。そこで考えられるのが、尻(しり)辺(へた)➡シッペタ➡シップリという変化である。「辺(へた)」は、例えば奈良時代に編まれた『常陸風土記』に「大男が丘の上に居ながら、手は海辺(うみべた)の蛤(はまぐり)を拾った」と記述している。これを見ると〈辺(へた)=縁(ふち)〉と分かる。
尻辺とは尻の周辺、つまり、末端という事である。そう言えば、口の周りを秩父ではク
チッペタといった。だが、クチップリとまでは変化しなかったようである。