「べらぼう」の巻
NHKの大河ドラマ「べらぼう」が人気らしいが、この頃の会話ではベラボウという言葉は聞かなくなった。昭和の戦前戦後頃までは、秩父でも「べらぼうめ」とか「べらぼうな事を言うな」などと、よく言ったものである。「バカ者め」とか「ふざけた事を言うな」というほどの意味である。
元は江戸時代、寛文~延宝(一六六一~七八)頃に、大阪道頓堀の見世物小屋で評判をとった、愚純な仕草で客を笑わせる〈便(べ)乱坊(らぼう)〉という名の醜男(ぶおとこ)から始まった言葉である。
愚純な仕草から、バカ・間抜けと人を罵る言葉となり、そこから程度がひどい、常識外れなどという意味に広がって、秩父では専ら前述のような遣い方になっていた。NHKの「べらぼう」は、ドラマの主人公の度外れた発想や行動を、当時の表現として言ったものだろう。だが、元々、語源が人を笑い者にしたものだけに、人権意識の高まった現在では、ほとんど使われなくなったものと思われる。