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秩父ではお葬式前の火葬が一般的

 秩父でのお葬式は、ほとんどが骨葬(いわゆるお葬式の前に火葬を済ませてある状態)で、多くが午後1時くらいから始まります。ですから火葬の時間もそれに合わせて少々早く午前8時~10時ごろになるのが一般的です。
 骨葬の流れは、午前中に近親者が集まり、出棺・火葬を行い、その後、式場に戻り告別式を執り行います。火葬の待合中に昼食を取るため、早いときには9時ごろ昼食(朝食?)になってしまうことも多くあります。

友引にもお葬式を行います

 全国的には友引の日には告別式を行わず、火葬場もお休みになってしまうのが一般的ですが、秩父地方では友引の日も葬儀を行います。もちろん火葬場も営業しています。
 お坊さんによっては「友引の日は、午後3時以降の葬儀でなければ」とおっしゃることもありますが、なんにしても、秩父では友引によって葬儀の日程がずれるということがありません。これはとても珍しいことです(もちろん友引の日を避ける場合もあります)。

枕団子と一膳飯の秩父スタイル

 人が亡くなると、まず枕団子と一膳飯をお供えします。この枕団子、上新粉で作るのが一般的ですが、秩父ではうどん粉を使うことが多いんです。また、一膳飯のご飯を炊くときは、枕団子をゆでた煮汁を利用します。このときは、使い古した鍋を使って、屋外で炊くことになっているのが秩父のスタイル。なお、使った鍋は一週間使ってはいけないそうです。

納棺時のサプライズ儀式

 納棺をするときには、立ち会った方々に縄が配られます。参列した方々はその縄を腰に巻き、縦結びに結びます。女性の場合はたすき掛けにする地域もあります。女性がたすき掛けにするところを見ると、着物を着ていた時代に “たもと” がじゃまにならないようにする名残りではないかと思います。
 また、納棺時は親しい方々が酒を口に含み、故人に吹きかけます。昔は殺菌・消臭のために行っていたことが今に残っているしきたりですが、霧吹きのように上手に吹ける方はごく一部。だいたいの方は液状のままお顔にかけてしまいます。ちょっと汚いですね(笑)。

お通夜に赤い水引

 訃報を知って、喪家に弔問に行くときやお通夜に持参するお香典。
 他の地域では白黒の水引を使用し、表書きを「御霊前」とするのが通例ですが、秩父ではこのときお香典とは別に「赤い水引」で「御見舞い」の表書きの封筒を準備することがあります。
 これは「入院中にお見舞いにいけず、今になってしまいましたがお受け取りください」という意味から来ているものです。東京から来た方や、このしきたりを知らない秩父の方はびっくり。複雑な顔をしてこの「お見舞い」を受け取ります。この習慣を秩父以外の場所でもしてしまう方がチラホラ……。これは秩父特有の習慣です。気をつけましょうね。ただ最近では、ほとんどの方が一般的な香典袋のみを用意するようになりました。昔ながらの風習が消えていくのは、ちょっと寂しい気がします。
 ところで、弔間に来る方を観察していると、手にお酒をぶら下げてくる方がいます。ある説によると「亡くなった方への手みやげ」 なんだそうです。秩父のお葬式って本当に奥が深いですね!

参列者は金剛杖を手に

 秩父の葬儀では、参列された方が着席すると、全員に “金剛杖” を、男性には “かんむり”を、女性の方には “いろ” と “とも白髪” が配られ、それぞれを身につけて巡礼のような格好で葬儀に立ち会い、導師(お坊さん)の「引導」が終わるまでそのままの姿で、その後身につけたものは回収されます。引導とは三途の川を渡ることを意味していて、「三途の川を渡る前まではみんなで同じ格好で見送るが、引導が終わり、三途 の川を渡った先からは一人で行ってくださいね」という意味があるそうです。

一口ずつ配られる生飯(さばめし)

 葬儀の読経が始まると、おもむろにお隣組さんがご飯を一口ずつ配ります。重箱などに入ったご飯を箸で参列している方々の手の甲に載せていきます。参列者の方々は、まるで試食のようにそれを口に入れます。これは参列した一同で会食して力をつけて旅立ちをするためのものだそうです。秩父の特徴的な風習でしたが、最近はほとんど見られないようです。

無縁の仏様への心遣いも

 秩父では、火葬の後の葬儀・告別式が終わると、休憩を挟んで忌明け・初七日法要が行われます。その休憩中に、祭壇に上がっているお膳(枕膳)を朱塗りのお膳(忌明け膳)に交換します。
 枕膳は、葬儀までのお膳として使われます。葬儀が終わった後は通常の食事に戻るという意味も含めて朱塗りのお膳に替えるのです。この時点で葬儀前・葬儀後が別れるのです。枕膳はご飯の位置が右側ですが、忌明け膳は通常の方が召し上がるようにご飯が左になっています。
 ここで特徴的なのは、ご飯はお代わりができないのでなるべく大盛にして、ご飯の上にはご飯で作った団子を乗せる事です。この団子は、新しい仏様用ではなく、無縁の仏様への食事として供えるものです。なんだかやさしい風習だと思いませんか?

受付の「ともに立ちますか?」

 秩父の葬儀に参列される方々は、大きく二つのパターンに分かれます。着席し、葬儀に立ち会う方と、お焼香だけしてすぐに帰られる方です。最初の葬儀に立ち会う方を「ともに立つ方」と呼び、精進落としまで同席されるとみなされます。
 受付のときに「ともに立ちますか?」と聞かれますので、「ともに立ちます」「いえ、お焼香だけで失礼します」などと答えましょう。親族以外でも親しい方はともに立つことが一般的ですので「お友達はともに立つ」と覚えておいてくださいね。

受付の張り紙「色代100円」

 受付に “色代100円” と書かれた張り紙が出ていることがあります。色代とは、いろ=経帷子のことで、それをお寺から借りる代金というのが本来の意味ですが、今ではこの100円はお香典と一緒に喪家へお渡ししています。先述の「ともに立つ」方が100円を支払います。この “色代100円” の張り紙を見かけたときは「ともに立つかどうか」を聞かれるのだということを覚えておいてくださいね。

お香典はその場で開封して確認します

 秩父では受付でお香典をいただくと、すぐに目の前で開封し、金額と表記が合っているかを確かめます。東京から参列された方などはビックリされるかもしれませんが、これは昔からのしきたり。決してあなたを疑っているわけではないのです!

キャラメルや飴の返礼品

 秩父では返礼品の袋の中にキャラメルや飴が入っています。「なぜ?」と思われている方は多いと思います。いろいろ説はあるようですが一説によると、昔、お葬式の時”じゃらんぽん” という棺をかついだ葬列がドラをじゃらんと鳴らしながらそのお宅の庭を回る儀式があり、その時に昔はお金を撒いたそうです。(故人の形見分けだと思いますが)そのお金が今日ではキャラメルや飴に変化して、返礼品の袋に納まったようです。
 秩父では遺物を形見分けの品という意味でお渡ししますが、本当の形見ではなく、新しい品物です。主に親戚・近しい人・お隣組などの葬儀に立ち会っていただいた方々(秩父流にいうと “ともに立った” 方)に、会葬御礼の返礼品とは別に、タオルやハンカチなどを用意し、持ち帰っていただきます。

葬儀の後の「寺送り」

 秩父では、葬儀がすべて終了すると「寺送り」という、故人をお寺へお送りする行事があります。まず、葬儀が終わって住職がお寺へ到着するころを見計らって、親族6~7名でお寺へ伺い、本堂で読経、位牌堂での読経に参加します。この読経は「この度、○○が亡くなり、このお寺に入ることになりました」と、ご本尊様とお寺に眠っている方々へご挨拶する意味があります。その後は住職を交えて、お茶をいただきながら法話をしていただく流れが多いようです。このとき、普段なかなかお話する機会がないお坊さんに、仏事の質問などをしてみるのもいいでしょう。

最後にとなえる「お念仏」

 秩父では、お葬式・精進落しの後、最後に “お念仏” というものがあります。お念仏は隣組みの方々が中心となって執り行います。鐘をたたき “十三仏” とか “南無阿弥陀仏” などの念仏をそれぞれ7回または13回行います。

 

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